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コロナショック後の経済と資産運用 「ニューノーマル時代に投資家が考えるべき3つのこと」

本記事は、お金のデザイン研究所所長、東京都立大学特任教授/京都大学客員教授の加藤康之氏による寄稿記事です。

はじめに

コロナショックが世界経済に大きな影響を与えています。先進国では新型コロナウイルスのワクチン開発に力を入れていますが、通常で開発に10年かかるといわれる新しいワクチンが多くの人のもとに届くのにはまだしばらくかかるでしょう。コロナショックは過ぎてもコロナとの共存はしばらく続くようです。私達はニューノーマル(新常態)な時代に生きることを覚悟しておく必要があります。

5月4日、日本政府の専門家会議は「新しい生活様式」を発表しました。働き方や娯楽など幅広い日常生活の新しい過ごし方を提言しています。私達の生活が変われば経済も変わります。5月3日の日本経済新聞によれば、伝説の投資家として世界的に著名なウォーレン・バフェット氏は「世界は変わる」と保有する航空会社の株式をすべて売却したそうです。産業や経済も激変が予想されます。一方、食べることや学ぶことなど本源的に変わらないこともあります。
では、資産運用にはどんな影響があるでしょうか。そこで今回は資産運用の観点から、コロナショック後に何が変わり何が変わらないのかを考えてみたいと思います。

なお、コロナショックのような市場の急変動に対応する具体的な資産運用方法については前回のブログ「コロナショックをいかに乗り切るのか-長期投資家の心得-」にまとめてありますのでご関心のある方はそちらをご覧下さい。

変わる産業構造と変わらない国際分散投資の重要性

バフェット氏の投資行動からも分かるように、人の移動が抑制される中、航空会社に代表される旅客輸送業界は厳しい状況に直面しています。一方、ネット販売など非対面でオンラインを利用したビジネスは盛況です。産業全体を見ればあちこちで優勝劣敗が起こっており、コロナショック後、産業構造は劇的に変わることは間違いありません。

多くの投資家が好況業種と不況業種の予想を行い銘柄の入替に忙殺されていることは想像に難くありません。しかし、注意する必要があるのは、航空会社の株式を売却してネット販売会社の株式を購入しても市場平均より高い超過リターンを得ることが出来るかどうかは分からないということです。
なぜなら、これらの予想は多くの人に共有されておりすでに株価に織り込まれている可能性が高いからです。超過リターンを得ることが出来るのは、その変化を事前に予想して売買するか、他の人より早く売買するしかありません。

これらはとても難しいことです。そもそも予想が結果的に当たる保証もありません。思わぬ業種や企業がイノベーションを起こしニューノーマルの勝ち組として名乗りを上げるかもしれないのです。

いずれにしろ、コロナショックに乗じて短期的に高いリターンを上げるのは、一般の投資家はもとよりプロの投資家でも簡単ではないと言えます。コロナショックに関係なく、超過リターンを得ることの難しさは変わらないのです。
そこで、あなたが長期投資家であるなら、難しい銘柄予想に依存して一喜一憂するべきではありません。広く分散投資することが賢い選択であることはこれまでと変わりません。また、日本の少子高齢化は今後も進み低成長経済も変わらないでしょう。さらに、成長の種は世界に広く存在し続けることはコロナショックの後でも変わりません。

したがって、これまで通り徹底した国際分散投資によって世界の成長を享受し着実な運用成果を狙うという長期投資の原則は全く変わらないのです。

変わるインフレリスクと変わらないリスク資産投資の重要性

今回のコロナショックでは感染者数や死亡者数の大きさが注目されていますが、もう1つその大きさで注目されているものがあります。それは各国政府による企業や個人への補償金の交付金額です。
各国政府は企業や個人に対して営業自粛や外出自粛を要請しており、その代わりに補償金を配付しています。日本では50兆円規模の第1次補正予算が組まれましたが、さらに大型の第2次補正予算も議論されており(5月14日現在)、併せると年間の国家予算規模を越えることになるかもしれません。

IMFの財政報告書によれば、補償金額は世界で8兆ドルという巨額になっており、世界GDPの1割近くに達するという見通しです。この資金は政府による負債になるので世界中の政府の負債総額が未曾有の水準に急増することになります。政府の負債が膨らむと怖いのが財政インフレ(財政支出の急激な増大により起こるインフレ)です。
つまり、インフレの発生確率は今後高まると考えられます。当面は需要が消失しているためデフレ圧力が高まると思われますが、コロナがある程度収束し需要が回復したとろで市場に溢れたお金がインフレをもたらす可能性が否定できません。

ところで、インフレの下で最も脆弱な資産は現金です。インフレが起これば一般的にモノ(実物資産あるいはリアルアセット)の価値が上昇し、逆に言えば現金の価値は下落します。日本でも70年代の石油ショックで厳しいインフレ(狂乱物価)に見舞われ、現金の価値はほぼ半減してしまいました。当時、資産の多くを銀行預金に置いていた人は資産の価値を半減させてしまったことになります。
それでも当時の日本は高度成長期にあり、経済全体のパイが成長していたので何とかしのぐことが出来ました。一方、現在のような低成長下の日本では各個人が自分で防衛するしかありません。
つまり、個人投資家はリアルアセットへの投資によって資産の価値を守る必要があります。

ところで、リアルアセットの代表といえば企業、つまり、株式であり、さらにその代替資産と呼ばれる不動産、インフラ資産、貴金属などがあります。
これらの資産は高いリターンの代償として短期的なリスクが高いためリスク資産と呼ばれており、これまでも長期投資ポートフォリオの中核でありました。
インフレリスクが高まると思われるコロナショック後の時代でも、株式を中心としたリスク資産による運用という長期投資の原則は全く変わりません。

変わる資本主義と変わらない投資家責任の重要性

コロナショック後に最も大きく変わるのは資本主義の形ではないかと私は考えています。実は、コロナショック以前から、資本主義の行き詰まりが指摘されるようになっており「ポスト資本主義」が議論されるようになっていました。それは、産業革命以降猛烈なスピードで成長してきた資本主義があちこちで制度疲労をおこしているからです。

経済格差のような社会問題や環境問題はその典型です。コロナショックは「非」資本主義的な社会的価値の重要性を明らかにし、資本主義の変化を後押しするだろうと考えています。社会や環境はこれまでは企業の外部に存在し企業が自由に利用(あるいは搾取と言った方が適切です)することが出来ました。
しかし、それも限界に来ていると思われます。今回の新型コロナウイルスのまん延という公衆衛生の問題も社会問題や環境問題がその背後にあると指摘する専門家もいます。このままほっておくと社会も環境も取り返しの付かない状況に陥ってしまい、その中で活動する企業(資本主義)自体が持続不可能になるのではないかと危惧されています。

その場合、最も困るのは投資家です。それは、資本主義からもっともメリットを享受してきたのが投資家だからです。そして、今、本来あるべき投資家の責任が再度問われるようになり、これがESG投資につながっています。
投資家責任とは議決権など投資家がその企業に対する権限を行使することであり、企業が社会の持続可能性を高めるためにその事業を通して社会的貢献(社会的インパクト)をもたらすように投資家が導くことです。

ESG投資ではその社会的インパクトが長期的に持続可能な経済的リターンにつながると考えるのです。投資家が投資家責任を果たすことは重要であるという長期投資の原則は全く変わりません。

おわりに

昨年の今頃は日本中が令和時代スタートに沸いていました。
ほんの1年前ですが、当時が懐かしく愛おしく思えます。しかし、残念ながら、世界は大きく変わってしまい、私達は覚悟決めてニューノーマルの時代を生きていかなければなりません。

一方、本ブログで検討してきたように、資産運用に関して言えば、国際分散投資、リスク資産への投資、そして投資家責任を果たすという長期投資の原則は何ら変わりません。

日々のニュースに一喜一憂せず、長期投資家としての哲学を変わらずに堅持することが今何より重要です。

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※本稿において、記載された意見・見解は、筆者個人のものであり、株式会社お金のデザインの公式見解ではありません。

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