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家庭で実践している子どもへの金融教育とは? 「 #親子ゼニ問答 」出版記念イベントレポート(第1回)

2019年8月23日(金)お金のデザイン本社で、経済アナリストの森永康平さんと森永卓郎さんによる書籍「親子ゼニ問答(角川新書)」の出版記念イベント「『親子ゼニ問答』出版記念! お金のプロが、これからの時代を生きる子どもに伝えたい“お金のこと“」を開催しました。

イベントは多くの方にご来場いただき、大いに盛り上がりました。本記事では、全3回でパネルディスカッション「家庭での金融教育」の模様をたっぷりとお届けします。

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家庭で実践している「子どもへの金融教育」とは?

ーではいくつかのテーマについてお話いただきます。1つ目は「お二人がご家庭で実践されている子どもへの金融教育は具体的にどういった内容でしょうか?」

森永(敬称略):新聞の中に入っている広告を一緒に見て物の値段について話し合うなど、家庭のなかで普段起こることをお金の教育に活かしています。

1つ、我が家の変わった教育についてのエピソードをお話しますね。あるとき子どもと出かけた時に、街中で「銀行って何?」と聞かれたので、「お金を預けるお店だよ」と答えたところ、「お金を預けるなら貯金箱でいいのに、なぜ銀行に預けるの」と続けて質問されたので「銀行に預けると増えるんだよ」と教えたんです。すると、6歳と3歳の娘たちが早速おままごとに銀行制度を導入したんです。彼女たちはおもちゃのお金を使ってお店屋さん役とお客さん役を交代しながら買い物をしていたのですが、お客さん役の長女がお金を使い切らないで一部銀行に預けたんですね。その後、交代してお客さん役になった妹も、少しだけ買い物をして、同じように残りを銀行に預けてしまったんです。

これって、何度かローテーションをしていくうちに二人とも買い物に使うお金がなくなるという状況になってしまうんですよね。仕方ないので僕が別のところからおもちゃのお金を持ってきて渡して、おままごとが再開されたということがありました。

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このやりとりは2つのことを表していて、1つが行動経済学で使われる言葉「合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)」です。子どもたちが各自貯金をしたのは個人という視点でみると良いことですよね。節約ですから。ただ結果的には社会にお金が回らなくなって、おままごとが続けられなくなってしまったので、社会全体で見たら彼女達の行動は悪いことになってしまう。このように、ミクロの視点でみれば正しい行動が、マクロの視点でみれば望ましくない結果になることを「合成の誤謬」と言います。僕は大学4年生で習いましたが、うちの3歳と6歳の子がもうその概念を学んでいる。言葉では教えていないけど、理屈は理解しているわけです。

もう1つ、二人ともお金がなくなって買い物ができなくなったときに、僕がお金を渡しておままごとが再開された。これは今、日銀が頑張ってる「金融緩和」ですよね。すごくないですか?言葉では教えていないですけど、感覚的には子どもはわかっているんですよ。

僕は口うるさい父親なんで、家庭内のそういうさりげないところに目をつけて「これは金融緩和だよ」とかいちいち教えています。


中村:森永さんほど面白くないかもしれませんが・・僕が心がけているのは2つですね。金融教育だけではないのですが、1つ目は「好奇心を持たせること」2つ目が「想像力を働かせること」。特に想像力はすごく重要だと思っています。

まず、お金への好奇心を持たせるのは決して悪いことではないと思っているので、おもちゃではなく実際の小銭を渡して、小さいうちから重さを感じながら遊ばせたりしています。お金についてポジティブに感じてもらえたらと。
次に想像力なのですが、これは所謂「考える力」を養うという事だと思っています。僕は”投資”はバンバンして良いと思っているのですが、単なる”消費”って嫌いなんです。

例えば、我が家にはテレビがなくて驚かれます。その感覚を5歳の息子にも植えつけようとしていて、息子が何か欲しいと言った際に、その理由を説明させ、親が納得しない限り買わないようにしています。

中村:「なんでほしいの」、「なんで今なの」、「これはいくら」、「これ買ったらこっちはだめだよね」ということを話すんです。森永さんの書籍にもありましたが、子どもって予想以上に、大人のことを見ていたりいろんな会話ができるので、対等に扱うことが重要だと思います。買ってと言われたものを買えない時には親も「なんで買えないか」をちゃんと説明するようにしているので、子どもがひっくり返って「買って!」とダダをこねるみたいなことは一切無いんですよね。そういう会話を通して、お金に対して、ポジティブに”よく考える”ということを日常生活のなかで常に心がけています。

森永:我々はこんな感じでやってますが、10年20年くらいして二人の子どもがちゃんとお金の知識を身につけた人になれるかはまだわかりません(笑)。答え合わせができるのはまだ先ですね。

金融に携わる二人の父親はどちらも「金融嫌い」

ーありがとうございます。ではテーマの2つ目「お二人が金融への興味を持ったキッカケを教えてください」

森永:我が家は仕事で父親が平日はもちろん、土日も家にいなかったので、母子家庭の様な状態だったんです。ただ、さすがに父親も悪いなと思ったのか、勤め先のシンクタンクからレポートの裏紙を持ち帰ってきて、これにお絵描きをしろと。当時はJリーグが開幕してスラムダンクも始まった頃で、男子はサッカーか野球かバスケをやるのが普通だったのですが、僕はアトピーと喘息がひどくて小さい頃運動ができなかった。だから、小学校の休み時間はその裏紙にドラゴンボールの絵を描いたりしていました。でも、スポーツをやってる男子達が多い中で、お絵描きしてると気持ち悪いと言われてしまい、それが嫌で絵を描くのをやめ、やることがなくなってしまった。そんな時にふとこの絵を描いていた紙の表側には何が書いてあるのだろうと見てみたんです。それがパンドラの箱を開けた瞬間でした(笑)。

父親は当時シンクタンクでエコノミスト業務をしていたので、紙には「デフレが~」とか書いてあったのですが、小学5年生くらいなので意味が分からないんですよ。で、父親に教えてくれと言ったら、分厚いマクロ経済学とミクロ経済学の教科書を渡されたので、目次からわからない言葉を全部調べて読み始めたんです。それを小5、小6ぐらいの頃からやっていて今に至ります・・
多分ほとんどの家庭では再現性が無い、全然役に立たないストーリーですね(笑)。

中村:よく大人になってグレなかったですね。

森永:そうですね。うちの母親がえらかったんだと思います。

中村:僕は新卒で野村證券に入社したのですが、学生時代は社会学部マス・コミュニケーション学科に在籍していて、経済のけの字も知らなければ金融のきの字も知らず、そもそも「証券会社ってなんだろう?」という感じでした。

2005年当時は就職バブルの始まりのときだったので、就職活動中色んな会社から内定をもらいましたが、その中からなぜ野村證券に入ったかというと、僕はすごく生意気な大学生だったのでそれぞれの会社に「3年後に社長になりたいです」と言っていたんですね。すると、ベンチャー企業には「なったらいいと思うよって」と言ってもらえたし、大企業には「一緒に目指そうよ」と言われたんですが、野村證券の当時の人事部長には「お前エラそうに言ってるけどできるのか?やれるならやってみろ」と煽られて、「ほなやってやるわ」と他社の内定をその場で断って入社を決めてしまいました(笑)

中村:結局、入社したら証券外務員の資格を取ったり勉強しなければならなくて、証券アナリストやプライベートバンカーの資格も持っているのですが、一生懸命やっていたら興味が出てきたんです。

父は製造業の者なのですが、野村證券に行くって言ったら「虚業に入るような教育をしたつもりはない」と言われましたね。今は理解してもらっていますが、当時は「お前がやっていることは意味がわからん」「製造業こそ日本だ」くらいのことを言われたので「金融の何がそんなにいけないのかな」と不思議に思っていました。

それぐらい自分の家系は金融からは縁遠い家系なんです。たまたま社会人になって入社したというのがキッカケで、気がついたらフィンテックベンチャーの社長をやっているので、学生時代に思い描いたのとは違っていて面白いなあと思っています。

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森永:うちの父親と全く同じですね。父親も経済アナリストをしていますけど、金融大嫌いで。

中村:そうでしたね。

森永:普通、共著で本を出す場合って同じ主張を持っている著者が協力して書きますよね。でもこの本(親子ゼニ問答 森永卓郎・森永康平共著)ってすごく珍しいんですけど、二人の意見が全然違うので、読んでいて混乱すると思うんです。どっちが正しいんだと(笑)。父親は投資でお金を増やすのはダメってタイプなので、この前ラジオ番組に一緒に出たんですけど、放送中に喧嘩になって、ちょっとSNS上で話題になってしまいましたね(笑)。僕が昔、外資系の運用会社に入ったときも「ハゲタカになったのかお前は」と散々言われました。

中村:(笑)親子でも考え方が違うのは不思議ですね。

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第二回、第三回では、資産運用や投資についてさらに深い話が繰り広げられた、パネルディスカッションの続きをお届けします。

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親子ゼニ問答(角川新書)

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老後2000万円不足時代。リアルなゼニ教育がココにある!
「老後2000万円不足」が話題となる中、金融教育の必要性を訴える声が高まっている。2019年10月には消費税増税となり、ますますお金の知恵が必要となる。しかし、日本人はいまだにお金との正しい付き合い方を知らない。W経済アナリストの森永親子が、森永家での4世代にわたる実証・実験を交えながら生きるためのお金の知恵を伝授する。新しい金融教育の教科書の登場だ。

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