いま、あるべき個人の資産運用とは(1) #THEOの生まれた背景
2016年にロボアドバイザーTHEO[テオ]が生まれてから、5年が経過しました。おかげさまで、THEOを運用している方の数は10万人を超えており、その半数以上はこれまで投資をしたことのない方です。運用している方が増えているのは、ロボアドバイザーによる「おまかせ資産運用」が少しずつお客さまに受け入れていただけているから、と私たちは考えています。
「THEO」というサービス名称は、ゴッホの弟であるテオドルス・ファン・ゴッホ(Theodorus van Gogh)から名付けられました。
今回から数回にわたって、私たち「お金のデザイン」がTHEOという資産運用サービスを生み出した理由と、その背景について、改めてお届けしていきたいと思います。
すでにTHEOで資産運用をしてくださっている方も、まだ検討しているという方も、今一度お金と人生について考えてみませんか。
※このブログは2016年発行 お金のデザイン 著「ロボアドバイザーの資産運用革命」(一般財団法人金融財政事情研究会) を原案としています。
超高齢化社会への変化と私たちが抱えるリスク
日本には今、これまで経験したことのない超高齢化社会が到来しています。
日本の総人口は年々減少しており、「日本の統計 2020」(出典 総務省統計局)によれば2050年頃には日本の人口は一億人を切るとされています。2000年には全体の約7割を占めていた生産年齢人口(15~64歳)の割合は51.6%に減り、代わりに17.4%だった高齢者人口(65歳以上)の割合はなんと38%にまで増えるという予想が出ています。
この大きな環境の変化に伴い、お金のデザインのアカデミックアドバイザー 加藤康之教授(京都大学客員教授・京都先端科学大学教授)は、資産運用・投資をするうえで3つのリスクを考慮しなければならないとしています。
一つ目の年金制度については、特に企業年金などで採用されている確定給付型年金の問題です。制度が持続するか、また給付金が減ってしまわないか不安に思われている人も多いでしょう。
私たちの置かれた環境における大きな変化のひとつとしては、従来の年金(確定給付型年金)から、確定拠出型年金への転換が進んでいることがあげられます。
厚生労働省「就労条件総合調査」によると、企業の退職金の額は全体として低下してきています。最も平均額の多かった1997年から20年で1,000万円も減少しました。これは、定年まで働き続けるという従来型の働き方が減ってきていることや、企業が自身の運用リスクを低減したいからという要因があると考えられます。
「確定拠出年金」は、2001年に制度が開始されました。その後の法律の改正なども後押しとなり2021年3月末時点の加入者がのべ約941万人にまで増加しています(厚生労働省発表より)。この記事を読んでいる方のなかにも、加入されている方は多いのではないでしょうか。
確定拠出年金は、企業の事業主や加入者個人が掛金を拠出し資産を運用しながら、退職後その資産を計画的に支出するというものです。従来の年金(確定給付型年金)と違うのは、自分で資産運用計画をたて、その資金を自分で計算しながら使っていかなければならないというところです。自分の健康状態や、いつまで働くか?どこに住むか?老後どういう生活を送るか?などそれぞれのライフプランにあわせて、支出額や資産運用の内容を見直していかなければなりません。
確定給付型年金も同様です。給付金額は決まっていますが、それをどう使うかは個人の判断に委ねられています。
二つ目はインフレです。若い世代の方はピンと来ないかもしれませんが、私たちの住む日本にもインフレが起こるリスクというのは存在しています。日本も1970年代前半に狂乱物価と呼ばれる激しいインフレに見舞われました。インフレが起きてしまうと、ものの値段はあがり現金の価値は下がってしまいます。
イメージがつかない方のために簡単な例を出してみると、もしあなたが100万円をずっと大切に持っていたとして、急激なインフレが起きてしまったら、その100万円では今と同じものが買えなくなるということです。1970年代のインフレ時はものの値段の高騰にパニックが起き、スーパーにはトイレットペーパーや洗剤などを買い占める人が殺到しました。
「現金」や「預貯金」が安全だと思っている方は多いと思います。しかし、もしインフレが起きた時にはそれらは安全な資産とは言えなくなってしまいます。
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三つ目に長寿です。日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳となり、ともに過去最高を更新しています(2020年7月厚生労働省発表)。これにより老後の生活に必要な資金が足りなくなる世帯が増えてくると言われています。2019年に、金融庁のワーキンググループによる報告書に“老後20〜30年間で資金は平均で約1,300〜2,000万円不足”すると提言があったことで「老後2,000万円問題※」として話題になったのは記憶に新しいでしょう。これはあくまでモデルケースであり、就労状況や寿命、生活水準などにより状況は変わるため、必要以上に不安を感じる必要はないでしょう。
今の時代に生きる私たちは、社会環境が変わるなかでリスクを抱えています。しかし、全員が同じ環境にいるわけではなりません。個人のライフステージや置かれた環境によって必要な資産運用の形は変わってきます。大きく分ければ、現役世代・退職者世代それぞれに合った資産運用が必要になります。
このように、THEOが生まれた背景には、人口動態を中心とした大きな環境の変化と、それに対応する人それぞれのニーズの多様化があったのです。
次回より、そのような環境で求められる資産運用とは一体どういったものかをお伝えしていきます。
ライフステージごとの資産運用手法やその考え方については、ぜひこちらのブログもご覧ください。