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なぜインデックス運用が増えているのか? #加藤康之の投資講座 〜中級編1〜

本記事は、お金のデザイン研究所所長、首都大学東京特任教授/京都大学客員教授の加藤康之氏により2017年4月21日に寄稿された記事の再掲です

株式や債券の運用にはインデックス運用(パッシブ運用とも呼ぶ)とアクティブ運用の2種類があります。

パッシブ運用とは、TOPIXや日経平均のようなインデックスと同じリターンを目指す運用のことです。与えられたインデックスに対して受動的(パッシブ)に運用するということでパッシブ運用と呼んでいます。

一方、アクティブ運用とはインデックスを上回るリターンを積極的(アクティブ)に狙うことを目的として運用する方法です。ただし、狙ったからといって必ず上回るとは限りません。意図に反して下回ってしまうということももちろんあります。

さて、これまで運用の主流はアクティブ運用だったのですが、最近アクティブ運用からパッシブ運用への移管の流れが世界的に止まりません。英国の主要経済紙フィナンシャルタイムズによれば、投資先進国の米国ではすべての投資信託におけるパッシブ運用ファンドの割合は過去3年間で4分の1から3分の1にまで上昇しているそうです。

理由1:パフォーマンス

パッシブ運用が増えている理由はアクティブ運用の成績不振と高コストと指摘されています。

S&Pダウジョーンズインデックス社の調査(注1,2)によれば、直近1年間で見ると、米国籍の米国株式投資信託で約60%、日本籍の日本株式投資信託で約58%のアクティブ運用ファンドのリターンがインデックスのリターンを下回っています。

5年間という中期で見ると、米国株式で約85%、日本株式でも約70%のアクティブ運用ファンドがインデックスを下回っています。より長期になればこの傾向はさらに高まると指摘されています。
ちなみに、日米で差があるのは、日本の株式市場の方が米国に比べて効率性が低く、インデックスを上回る運用を行えるチャンスが多いと考えられていますが、これについては別の機会に取り上げましょう。

理由2:コスト

次にコストはどうでしょうか。ボーグル(注3)の著書によれば、運用のトータルコスト(運用報酬や取引コストなどを含む;米国のデータ)で見ると、アクティブ運用はパッシブ運用に比べて年率2%程度高いとされています。これだけ条件が揃えばパッシブ運用への流れもうなずけるところでしょう。

・・・

しかし、「パッシブ運用が増加する背景にはより本質的な問題がある」と指摘するのはファイナンス理論で世界的に著名でノーベル経済学賞受賞者のローバート・マートンMIT教授です。
筆者は先日マートン教授と京大シンポジウムで対談する機会を持ちました。

その時に同教授が指摘していたのは「信頼」という言葉でした。マートン教授によれば、それは2008年のリーマンショックにさかのぼります。

金融システム崩壊の危機にさらされたリーマンショックは、消費者の金融サービス業者や規制当局に対する信頼を失わせることになりました。そして、投資家は不透明な金融サービスに対して距離を置くようになったのです。アクティブ運用からパッシブ運用に資金が流出しているのは、金融サービスに対する信頼喪失の証拠と考えることが出来ると同教授は指摘していました。
つまり、投資家は、潜在的には高いリターンをもたらすかもしれないとしても何をやっているのか不透明なアクティブ運用よりは透明性が高く信頼性の高いパッシブ運用を選んでいるということです。

どんなに最先端の運用手法(技術)が開発されても信頼がなければ利用者に受け入れられることはないのです。なぜなら、技術はそれだけでは信頼を創造できないからです。その技術を使う信頼ある金融サービス業が存在しなければなりません。パッシブ運用の隆盛は信頼の重要さを改めて示していると言えるでしょう。信頼こそ最も重要な資産なのです。

ちなみに、THEOが投資対象としているETFはすべてパッシブ運用であり、これらをTHEO独自のモデル(その具体的な方法はWhite Paperで公開されています)で組み合わせることによって運用されています。

以上

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<参考文献>
1. S&P Dow Jones Indices, 2016, “SPIVA® U.S. Scorecard”, Year-End 2016
2. S&P Dow Jones Indices, 2016, “SPIVA® Japan Scorecard”, Year-End 2016
3. John C.Bogle, 2014, “The Arithmetic of ‘All-in’ Investment Expenses”, Financial Analysts Journal 70, Number 1 (January/February), pp.13–21

※本稿において、記載された意見・見解は、筆者個人のものであり、株式会社お金のデザインの公式見解ではありません。

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