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「しあわせ」と「お金」の関係について研究するのはなぜ? 創業者インタビュー(後編)

お金のデザインは、金融業界で長く活躍してきたファウンダー(谷家衛:現お金のデザイン取締役会長、廣瀬朋由:現お金のデザイン取締役副会長)により設立され、誰もが高度な資産運用ができ、お金の不安に悩まされない人生を送っていただけるよう2016年にロボアドバイザーによるおまかせ資産運用サービスTHEO[テオ]をリリースしました。

今回はあらためて、お金のデザインNewsLetterの編集部員がファウンダーの一人である廣瀬に、最近携わっているという京都大学との研究について聞いてみました。

今回は後編をお届けします。

しあわせと資産運用、その関係とは?

ー前回、ロボアドバイザーはなぜ必要なのでしょうか?という問いから「人生の主導権を握るため」というお話になりましたが。

「人生の主導権を握る」とは、言い換えれば人生の選択肢と柔軟性を確保することです。そのためには、最善のタイミングで最適な意思決定を行い、それを直ちに行動に移し続けることが必要です。
資産運用においてそうした意思決定のサポートをできるのが、ロボアドバイザーであると考えています。

しかし資産形成はある意味で、ゴールへ向かうための手段、過程にすぎません。そのゴールとは、端的に言えば「しあわせ」です。資産形成は私たちが「しあわせ」になるために行うものです。
とすると、狭い意味での「お金」にばかりフォーカスするのではなく、その先にあるより包括的な価値としての「しあわせ」へと導く資産形成を顧客や社会に提案することもまた、金融機関の重要なミッションとして浮上してきます。

ー京都大学(大学院文学研究科哲学専修)と行っている幸せに関する研究は、どのような研究なのか教えてください。

この研究は、世界的に多くの不安定要因を抱えていくニューノーマル時代において、周りに左右されるのではなく、個人の価値観に合わせた「しあわせ」の実現をサポートする金融サービスの在り方を、学術的見地から見てみることで、従来の金融機関の枠組みを越えることを目指すためのものです。

哲学の研究分野では、日本最高峰の京都大学大学院文学研究科哲学専修と共同研究することで、哲学的見地から「しあわせ」を再定義し、長い人生の指針として、かつ日常生活にも生かせる「しあわせ」という身近で定量的な尺度を構築したいと考えました。

ー難しそうですね。具体的にはどういうことですか?

「しあわせ」は、「幸福」「ウェルビーイング」「生きがい」などさまざまな言葉で表現されます。そこにはさまざまな要素が含まれています。哲学・心理学・文化人類学・経済学など、多くの学問分野での研究も蓄積されています。

この研究では、多様な要素を含んだ「しあわせ」の概念を哲学的な見地から改めて整理した上で、それを日常生活にも活かせる考え方や指針へと落とし込むことを目指しています。より具体的には、個人個人が自分独自の「しあわせ」を可視化し、診断できるような尺度の開発に取り組んでいます。これは、お金のデザインが掲げているミッション「お金を通じて、一人ひとりが自分らしく生きることを応援する」を、より包括的な視点から実現しようとするものとも言えます。

ー幸せというのは、人それぞれであり、難しい分野だと思います。なぜ、このような研究をしようと思ったのですか?

私は1982年以来、40年間機関投資家向けの運用ビジネスに関わっており、その経験も強く影響しています。当時の業務内容は、単なる運用戦略の紹介ではなく、機関投資家などの顧客が持つ固有のニーズに対応するということでした。
リスク・リターンの議論にとどまらず、年金基金の成熟度(個人で例えると年齢に相当します)に応じたインカム(給付受取)やインフレヘッジ、その他固有のリスク調整などニーズが多様化していたからです。

また、投資運用理論にも大きな進展がありました。運用業界では『シングル・ファクターモデル』 (1964:リスク・リターンを中心概念としたウィリアム・シャープが提唱したCAPM理論)が主流でした。今でも多くの運用会社はこのモデルを使っています。
ところが、1993年にファーマ-フレンチが提唱する『マルチ・ファクター・モデル』という新しい運用理論への展開がありました。これは、リスク・リターンだけではなく、投資先の経済的要因以外に投資家のニーズも考慮する必要が発生し、インカムやインフレヘッジ等も考慮しなければお客さまの問題解決につながらないという理由からです。

私が取り組んでいる「しあわせ」の研究は、こうしたマルチ・ファクター・モデルの自然な延長線上にあります。さまざまな要素を含む「しあわせ」を、個人個人に合わせた最適なバランスで実現するにはどうすればよいか、どのような「しあわせ」のポートフォリオを提供できるのか、この研究を通じて考えています。

また、2000年代に入り、海外のみならず日本でも社会的責任投資(SRI=Social Responsibility Investment、ESG 投資の前身)が広まりました。資産運用の分野でも、狭い意味での経済的価値にとどまらない、より包括的な価値(この場合は公共的・倫理的価値)が問題とされるようになってきたということで、注目すべき現象だと思います。これもまた、「お金」の枠組みを越えた「しあわせ」の研究に取り組もうと思ったひとつのきっかけです。

当社でも投資家の多様なニーズに対応できるマルチ・ファクター・モデルを取り入れており、それを体現したものとして、THEOは3つの機能ポートフォリオ(グロース・インカム・インフレヘッジ)を組み合わせたポートフォリオで運用します。

そしてさらに、経済要因以外のファクターに、「しあわせ」の要素を取り入れられるのではないかと考えました。「お金」は、より広い価値である「しあわせ」とつながっており、その内容も個人ごとに異なるものだからです。
個人の「しあわせ」に調和したポートフォリオを提供できれば、長期的な資産形成が、より「しあわせ」な人生形成につながると考えたのです。

ーこの研究により社会的にどのようなインパクトがあればよいと考えていますか?

研究結果によってわかってきた「しあわせ」を構成する複数のファクターを通して、自身を客観的に、一貫性をもって把握し、自分固有の本当の「しあわせ」を知ることができるのではないかと考えています。

資産額の大きさによって「しあわせ」が決まるというような、一元的な経済的価値に縛られている現状から、自分固有の価値や人それぞれが持つ多様な価値を理解しあえるような未来になれば良いと思います。

人生の主導権を握るためには、他人の言葉に安易に流されるのではなく、自律した「わたし」をもつ必要がありますが、それによって個人の枠に閉じてしまってもよくありません。社会全体へ、そして未来へと開かれた広い視野も必要です。つまり、「わたし」の考え方をしっかりもつと同時に、「わたし」だけでない「われわれ」という視点をも兼ね備えることが重要です。それによって、自身の人生ステージ・社会環境に関わらず一貫性のある人生設計を築くことできるのではないかと思っています。

「自分らしく生きる」ということは、「自らの人生・生活の目標を設定でき、その価値や意義を見出せる」ことですが、価値や意義といっても、漠然とした概念では、「しあわせ」のための行動に移れません。
価値や意義からえられる「しあわせ」を自分のものとするため、「しあわせ」を構成するファクターを8つ提示し、自分なりの傾向をとらえるヒントにしてもらえればと考えています。

それによって、「しあわせ」のファクターを通して自身の人生観をイメージすることができれば、資産形成だけでなく、消費行動や働き方等の人生全般にも応用できると考えています。

【京都大学との共同研究「「しあわせ」の再定義と定量的尺度作成のための調査研究」の成果を公表】(お金のデザインコーポレートサイト)


プロフィール

廣瀬 朋由(お金のデザイン 取締役副会長)
横浜国立大学経済学部卒業。1982年に三井信託銀行(現三井住友信託銀行)株式会社に入社し、投資顧問部、受託資産運用部(年金運用部)にて内外株式/債券の運用の統括責任者になる。1989年に和光証券経済研究所出向。1999年に世界最大の資産運用会社バークレイズ・グローバル・インベスターズ株式会社に入社、営業統括本部営業企画部長として、営業企画、商品戦略、マーケティング、コンサルタント・リレーションズ全般を担当。2009年ブラックロック・ジャパン㈱との合併後、Global Client Group(営業部門)COOに就任。その後、2013年当社設立。

※当ブログの内容は廣瀬個人の見解によるものです。お金のデザインの公式見解ではありません。

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THEOの運用については、「THEOの仕組み」をご覧ください。
運用方針、運用モデルについて、詳しくは「THEOホワイトペーパー」をご参照ください。

「プロとAIがいる、おまかせ資産運用THEO[テオ]」
https://theo.blue/
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