ウクライナ情勢が今後の世界市場やTHEOに与える影響は?
ロシアのプーチン大統領は2月21日、ウクライナ東部の一部を実効支配している親ロシア派の武装勢力2つを独立国家(ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国)として認める大統領令に署名を行い、更にウクライナ東部での特別軍事作戦の実施を決めました。その後2月24日に、ロシア軍がウクライナの軍事施設への攻撃を行うなど、ウクライナへの軍事侵攻を始めています。
当レポートでは、今回のウクライナ情勢悪化に関する世界市場やTHEOの運用への影響や、このような環境下において大事なことに関して、当社の考え方をご紹介いたします。
足元のウクライナ情勢の概要と世界市場やTHEOへの影響について
今回のウクライナ情勢の混乱を受け、2月24日のロシアの株式市場が大きく下落しています。(RTS指数、円ベース:-38%)また、ロシア国債(USD建 2047年償還)の利回りは 11.11%となり、23日の6.42%から大幅に利回り上昇(債券価格は下落)しています。(25日のルーブルの対円レート:-4.93%)
しかし、こういった市場の動き自体による影響は、以下の通り限定的と考えられます。
ロシアの経済規模(GDP)は、名目ベースで米国の1/14、日本の1/3、韓国やオーストラリアと同程度の規模です。指数時価総額(MICEX)で見ても、世界の株式時価総額のわずか0.7%程度です。
THEOのグロースポートフォリオでは、新興国株式を対象としたETFの中にロシア株式を3%程度組み入れているものがありますが、新興国株式の組入れはポートフォリオの20%程度以下(非常に少額のポートフォリオを除く)に抑えられているため、ポートフォリオ全体に占める実質的なロシア株式の組入れは1%以下となっています。
インカムポートフォリオでのロシア債券の組入れも1%以下と非常に低くなっています。
今後起こり得る市場への影響
前述の通り、ロシアの経済規模は、世界全体でみると大きくはありませんが、今後の影響の広がりには注意が必要であると考えています。
質への逃避:
大きな混乱が生じると、相対的にリスクが高いと思われる資産から、より安全と思われる資産(例えば先進国国債、ドル、円、金など)に資金がシフトすることがあります。このような資金シフトは、過去の大きな市場混乱時に多く見られています。中長期的な経済合理性ではなく、短期的なリスク回避行動による資金シフトは、一時的に市場の価格形成を歪めるものの、長い目で見ると魅力的な投資機会を生み出すことも少なくありません。
つまり、過度の投資マインドの冷え込みにより過小評価された市場が、情勢の落ち着きとともに急回復し、後から考えると絶好の投資機会だったということは、過去には多く見られています。
物価動向:
既にインフレ懸念が高まりつつあった中、今回の混乱がインフレをさらに加速させる可能性があります。各国の金融政策における、コロナ危機対応/景気下支えとインフレ抑制のバランスはさらに難しいものとなるでしょう。その結果、今回の混乱が、幅広い資産クラスで価格変動が激しさを増したり、資産間の価格変動のばらつきが高まったりする要因となる可能性があります。
ロシアは、世界2位の天然ガス、世界3位の原油生産国です。EUは、天然ガス輸入量の約4割、原油輸入の約3割をロシアに頼っています。そうした規模の資源大国での混乱は、資源価格のさらなる高騰につながる可能性があります。また、ロシアは農作物についても輸出大国です。特に、小麦は世界1位、大麦は世界3位という規模で、食糧価格への影響が懸念されます。これらは特に、消費全体に占める食糧・エネルギーの割合が大きい国にとっては深刻な問題で、貧困層の拡大や社会不安の増大にもつながりかねません。さらに、ロシアは金属の分野においても世界有数の輸出国で、すでにアルミニウム、ニッケル、パラジウムなどの価格に上昇が見られます。多くの産業において主要原料であるこれらの供給が滞れば、サプライチェーンのさらなる混乱に繋がる可能性があるでしょう。
経済制裁:
欧米による経済制裁は、2014年のクリミア半島併合時のそれよりも広範でかつ厳しいものとなる可能性があります。しかし近年、ロシアは、財政の健全化、外貨準備の積み上げ、貿易の多角化を進めており、経済制裁に対する抵抗力は高まっていると思われます。一方で、グローバル化が進展していることで、経済制裁による影響は、ロシア以外の国にも広く及んでしまう可能性もあります。
上述のようなエネルギーや食糧価格の上昇、サプライチェーンの混乱だけでなく、ロシアで事業展開する企業やロシア企業と取引がある欧米金融機関への影響も懸念されるところです。また、欧米による経済制裁はロシアと中国の結びつきを強め、世界の分断・分極化をさらに深めることにもなりかねません。こうした様々な要素を考慮すると、経済制裁だけで、早期に混乱を解決することは容易ではないと考えています。
こうした環境において大事なこと
世界経済は、時に大きな困難に見舞われます。そしてそれは、経済的なもの(ITバブル崩壊、アジア通貨危機、リーマンショック、ソブリン危機など)だけでなく、様々な争いによるもの(イデオロギー対立、民族・宗教紛争、資源争奪、覇権争いなど)など、多岐にわたります。そして、それぞれが相互に作用し合うことで事態をさらに複雑にします。
しかしながら、このような環境において最も避けなくてはならないことは、短期的な市場の上げ下げに惑わされるままに、投資に対して消極的になることだと考えております。
長期でみたときに資産を増やしていくための投資の基本は以下の4つです。
・長期投資
・幅広い資産クラスへの分散投資
・投資タイミングの分散(積立)
・適切なリスク・コントロール
THEOはまさにこの「投資の基本」を実践するためのサービスです。
THEOのおまかせ運用では、毎月「リバランス」という機能によって長期投資を前提としたポートフォリオの見直しを行っています。
THEOのおまかせ運用では、この機能によってお客さまは何もしなくても、常にターゲットとするポートフォリオ配分が保たれ、市場が回復する時のために準備をしておくことができます。「おまかせ運用」ではこのリバランスを通じ、市場下落後の回復時に恩恵を受けることができます。
また、毎月定期的に積立入金をすることによっても、市場回復時の恩恵を受けることができます。市場が下落した月は(価格の下落により)より多くの株式を購入することができ、かつ相場が回復したときに価格上昇の恩恵を受けられるためです。現在の市況は積み立てを続けて、投資タイミングの分散をしていらっしゃる皆さまにとって、同額でより多くのETFを購入できる機会でもあります。
THEOは、最大30種類以上のETFを組み合わせ、グロース(株式中心)・インカム(債券中心)・インフレヘッジ(実物資産中心)という機能別のポートフォリオを組成することで、徹底的な分散投資を行なっています。
これらのETFをさらに分解するなら、投資先資産(株式、債券、コモディティ、不動産等)のバリエーションは世界86の国・地域にわたり、 最終的な投資対象は11,000銘柄以上という豊富さです。
さらに新しい機能として、昨日「リスク調整機能」を提供開始しました。THEO以外で、日本の企業が発行する個別株式を保有されているお客さまの、より安定的な資産形成をサポートする機能です。
保有株式をインプットすると、保有株式と合わせたときに最適になるようTHEOの比率を調整し、お客さまの資産全体のリスク低減を目指す機能です。世界経済に大きなリスクが出現する環境だからこそ、分散投資を始める、続けるためのひとつの選択肢として、「リスク調整機能」にもご注目いただければ幸いです。
市場の動きに対し不安に感じることもあるかもしれませんが、THEOの運用に任せつつ、市場の一時的な上げ下げに一喜一憂するのではなく、市場のなりゆきを俯瞰して長期的な目線で運用を行っていただくことが良いと私たちは考えています。
今後もTHEOをよろしくお願いいたします。
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※上記は、2022年2月25日作成時点の各種データや報道情報等を元に、株式会社お金のデザインがご参考としてまとめたものであり、情報の正確性を保証するものではありません。また過去の実績は、将来の実績を予測・または示唆するものではありません。
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THEOの運用については、「THEOの仕組み」をご覧ください。
運用方針、運用モデルについて、詳しくは「THEOホワイトペーパー」をご参照ください。