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安全資産としての長期株式投資 〜 #加藤康之の投資講座 番外編3〜

前回のブログでは、マイナス金利時代の下、安全資産としての国内債券の投資戦略がきわめて困難な状況に陥っていることをお話ししました。そして、その代替戦略として機関投資家が採用する3つの投資戦略を紹介しました。

その時、第4の投資戦略として株式投資を採用している機関投資家が増えていると少しだけ紹介しましたが解説を省いたので、安全資産なのに株式と聞いて疑問に思われた方も多かったと思います。そこで、今回はこの第4の投資戦略の意味について解説したいと思います。

前回記事

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前回のブログでは債券の代替戦略として、超長期国債や外国債券などを利用した3つの投資戦略を解説しましたが、それでも、それなりの限界があると言えます。金利がマイナスという現状がある限り、いろいろ工夫しても債券投資にこだわる限りマイナス金利のくびきから逃れることは出来ません。

そこで、債券の代替投資でありながら債券から抜け出すことを考える投資家が増えています。つまり、株式投資です。ただし、そのためには投資期間の考え方を変える必要があります。つまり、長期投資を考えるということです。長期投資とは、例えば、一度投資したら長期間にわたり投資を維持するということです。それが可能であれば、債券に比べてリスクが高いと考えられている株式が低リスクになり、債券の代替になることが期待出来るのです。本当かと疑う方もいると思いますので、実際に過去のデータで検証してみましょう。

ここでは検証する投資期間として短期から長期まで1年間、5年間、10年間、15年間の4つの投資期間を考えて比較してみます。そして、世界株式指数(MSCI-ACWI、配当込み株価指数)を投資対象とし、1987年12月末~2019年11月末(32年間、月次データ)を検証期間とします。検証方法は、4つの各投資期間について、1か月おきに32年間のすべてのタイミングで運用をスタートして運用し続けた場合のリターンを計測します。例えば1年間の場合では、1987年12月末~1988年12月末、1988年1月末~1989年1月末、1988年2月末~1989年2月末、...、2018年12月末~2019年12月末のように1か月ずつずらし、合計で372個の1年間リターンを計測します。つまり、32年間という検証期間の中で、1年間の運用をした場合のすべてサンプルを補足したわけです。同様に10年間の場合では、1987年12月末~1997年12月末、1988年1月末~1998年1月末、1988年2月末~1998年2月末、...、2009年12月末~2019年12月末の264個の10年間リターンを計測します。他の期間についても同様に計算します。

これらの4つの投資期間で計測された4組のサンプルに関するまとめを比較表に示します。なお、比較できるようにすべての期間のリターンは年率リターンに換算しています。比較表だと分かりにくいので、最大値、平均値、最小値を折れ線グラフで示してみます。すると、比較表やグラフから次のことが分かります。

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・期間が長くなるほど、最小値が大きくなり、15年間ではプラスになる。
・期間が長くなるほど、リターンのばらつき(最大値と最小値の差)が小さくなる。(ただし、期間が長くなるほどサンプル数が小さくなり信頼性は低下しますが、それでも十分大きな数です。)
・期間が短くなっても平均値はそれほど下がらない。(つまり、リスクに対する投資効率は高くなる)

以上は要約ですが、最小値に着目して比較してみましょう。1年間の投資期間で見れば最小値は▲52.81%であり、これは2007年11月末~2008年11月末の期間で、リーマンショックが起こった2008年9月を含んだ期間です。やはり、株式はリスクがあったわけです。ところが、15年間で見るとどうでしょう。最小値でも+1.21%と、過去32年間のどの15年間を取っても1度もマイナスになっていません。しかも、平均値は5.8%と債券に比べて大きな値になっています。ちなみに、この+1.21%を記録した15年間は1997年7月末~2012年7月末の期間であり、2008年9月に起こったリーマンショックの暴落を受けた後の回復する前に終了する期間です。それでもマイナスになっていないことに注目して下さい。もちろん将来は予見できませんが過去32年間のデータを見る限り、もしあなたが15年以上投資し続けると覚悟を決めれば、債券の代替になりえると言うことが出来ます。

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以上、債券代替投資としての株式投資の意義を解説しました。長期という期間がリスク資産のリスク特性を変えてしまうのです。長期投資が可能かどうかが自分に最適なポートフォリオを構築する上で最も重要な前提になると言えます。

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