ひとは、何に投資しているのだろうか
前回のブログでは「ひとが投資をすることとは」についてお話しさせて頂きました。その際、投資へ踏み出す前の預金は、金融商品としての性格上、元本保証商品であることから、使いみちを留保している、いまだ意思を明確にしていない金融資産であると申し上げました。その対比において、投資は、「価値観・しあわせ感」に基づく意思に従った、ある意味でリスクのある金融資産である、と考えられます。
この回では、ひとが投資をすることの意味を知るために、「ひとは、リスクを負ってまでして、投資することによって、何に備え、何を得たいと考えているのか」ということについて、考えてみたいと思います。
私は、ひとは次のような考え方を基本にしているのではないか、と考えています。
以下、2つの異なる時点における自分と資産や投資というものが、どのようにかかわっているのかということについて、図解しながら、具体的にお話ししたいと思います。
資産形成/自己形成のプロセス
ひとは、成長していく過程で、どのようにして、資産を得て、それを消費しながら、さらに新たな資産が生み出されていくのでしょうか。
資産形成/自己形成のプロセス
まず、これから社会人になろうとする時、図のt0期のスタートの時点において、大半のひとが保有している資産は、それまでに築いた体力と知力(知識・技術)で構成された能力(無形資産)だけです。
次に、社会人になり、自らの力で収入を得るようになってから1年経つと、t0期からt1期へとステージが移行することになります。すなわち、t1期においては、t0期の1年間社会人を経験することによって得られた新たな能力(無形資産)に加えて、t0期の収入から当該1年間に要した生活費等を控除した金融資産(有形資産)が、貯蓄されていくことになります。
そして、次のt2期も同じことが繰り返され、t2期の終わりの時点では、ひとが保有する資産は、t2期に獲得した知識・技術・経験が加わった能力(無形資産)と、t2期の収入から当該1年間に要した生活費等を控除した金融資産(有形資産)と、t1期から持ち越した金融資産(有形資産)の総和が、総資産となるのです。
現在の潜在的な能力を維持・回復する資産
ところで、天災や病気等に見舞われたような場合においては、貯蓄した金融資産を取り崩して、それを食費や医療費等として使うことで、自分の現在の潜在的な能力を維持・回復することができます。
そのような場合には、取り崩すための金融資産は安定していることが望ましく、金融資産の時価を気にすることなく必要な物品等を購入することができれば、迅速かつ確実に自分の潜在的な能力を維持・回復することができるのです。
それゆえ、特に不測の事態に備えるという意味では、元本保証商品である預金は、安心して生活するのに必要不可欠な金融資産であると言えます。
前回のブログで、私は、預金を「使いみちを留保して、いまだ意思を明確にしていない金融資産」であると申し上げましたが、正確には「現在の潜在的な能力を維持・回復しようとする本能的な意思はもっている金融資産」と言い換えることができます。
将来の成長した能力を維持するための資産
それでは、天災や病気等のような不測の事態も含めて、現在の潜在的な能力の維持・回復に必要な水準を超えて、余剰資産が生じた場合には、その資産をどのように取り扱ったらよいのでしょうか。
将来の成長した自分の能力を途切れることなく継続的に維持するためには、現時点の資産が自分の成長にあわせて増えてくれる(成長してくれる)ことが“期待”できる資産であれば、それは有効な投資ということになります。
逆に、低金利のまま保有し続けるような投資では、将来の成長した自分にとって十分な価値を持ってくれていないということもあり得ます。
ここで重要なのは、自分の成長に合わせて増える資産に投資するということであって、誰よりも高く成長する資産に投資することではないという点です。“期待”の裏側には必ずリスクが内包されるため、あくまでも最悪のシナリオを想定し、リスクを自分でカバーできそうな度合いにとどめるということが必要で、ここにリスク許容度という言葉の重要性があります。
将来の成長した能力を維持するための具体的な投資対象資産とは何か
それでは、いったいどのような資産に投資したらよいのでしょうか。
自分の成長性・方向性というものは、自分が構成員となっている社会によって左右されています。それゆえ、社会に投資するということは、自分の成長・方向性と大きく異なることが少ない、ということも言えるのではないでしょうか。この視点からみれば、企業等の経済活動の裏付けを持った株式や債券、すなわち有価証券等への投資は、理想に近いものと言えるのではないかと思います。
さらに、ひとつ頭の片隅に入れておきたいことは、私どもが安心して投資したり市場にアクセスしたりできているのは、私たちもコストを負担している公的なプラットフォームを利用できているおかげである、という点です。ここでいうプラットフォームとは、投資参加者が、コストを負担しつつ、平等に取引参加できる仕組み(取引システム・インサイダー等法令整備)を広義に捉えたものです。
投資先のみならず投資プロセスまでも含めた投資という行為において、われわれは、自分の分身でもある自分の資産のみならず、自分の人生も、ある意味すでに社会に委ねている、あるいは社会という自分の成長の鏡に委ねているのです。
投資が、自分の資産を自分の成長の鏡である社会に委ねる行為であるとするならば、次は、どのような委ね方、どのような投資方針が自分に合ったものなのかということが、重要な課題になってくると思います。その点については、次回お話ししたいと思います。
・・・
THEOの特徴について、詳しくは「THEOについて」をご覧ください。
運用方針、運用モデルについて、詳しくは「THEOホワイトペーパー」をご参照ください。